習熟

この種のタイプライタとしては、
通常のキーのほかに単語や音節用のキーを数十個つけ足して混用し、
打字速度を向上させようとしたものはいろいろある。
アメリカのベニントン( Wolf Bennington )の1903年の考案は
26個の追加キーを持っていた。この考え方による新しいところでは、
IBMのコピッツ( Koppitz 1971 )の研究などがある。
かれはふつうのタイプライタに使用頻度の高い単語やシラブル、たとえば
"by"、"for"、"in"、"on"や"ed"、"ing"などを一打で打てるタイプライタを作り、
それを使ってコピー・タイピストを訓練したところ、
確かにタイプ速度は若干上昇した。 しかし実験の終ったあと、
かれらは同じシステムを使い続けているうちに、
そうした特殊キーはだんだんと使わなくなり、
遂にはもとの通常のタイプに戻ってしまった。


 その理由は、たとえば"for"などを打つときに、
1打鍵で打つか、それともふつうに3打鍵で打つかの選択が可能であり、
いちいち判断をしなければならない。それは簡単なことのように思えるが、
しかしふつうのタイプ作業に異種の作業が追加されるので、
そのこと自体が作業を困難なものにし、誤動作をまねきやすく、
ストレスを増すのだから、タイピストたちはしぜんと
単純なふつうのタイプ作業に帰ってしまったということなのである。

大変興味深い話。
選択のコストが高いから「Shiftは左だけに絞った方がイイ」と考えてるのと近いか。
あと、Qweローマで "zji" とかやっちゃうのも、習熟不足とも言えるけど、迷った結果として両方打っちゃってると考えれば同根かな。


"for" に慣れれば "for"ward には使えそうだけど、be"for"e なんかは難易度が高い気がする。あらゆる "for" を含むものに即座に対応できないなら、結局3打かける方が汎用性で上回ると思われる。